老後資金への不安が現実味を帯びる中、iDeCo(イデコ)への関心は年々高まっている。iDeCoは強力な税制優遇を持つ一方で、制約も多い制度である。本記事では、iDeCoの基本から始め方、メリット・デメリット、NISAとの違い、さらに企業型DCを導入している会社員が注意すべき点まで整理する。
iDeCoとは何か
iDeCoとは「個人型確定拠出年金」のことである。自分で掛金を拠出し、自分で選んだ金融商品で運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金制度である。
最大の特徴は、老後資金の形成に特化している点にある。短期的な資産運用ではなく、長期・積立・分散を前提とした制度設計になっている。
iDeCoの始め方
iDeCoを始める流れは以下の通りである。
- 加入資格と掛金上限を確認する
職業や勤務先の制度によって、毎月の拠出上限が異なる。 - 金融機関を選ぶ
証券会社や銀行でiDeCo口座を開設する。重要なのは、運用商品のラインナップと口座管理手数料である。 - 運用商品を選択する
定期預金、保険、投資信託から選ぶが、長期運用では低コストのインデックス型投資信託が主流である。 - 掛金を設定する
月5,000円から開始でき、年1回変更可能である。
iDeCoの掛金上限(2024年以降)
iDeCoの掛金上限は以下のように定められている。
- 自営業者:月68,000円
- 企業年金なしの会社員:月23,000円
- 企業型DCありの会社員:月20,000円(※企業型DCと合算)
- 公務員:月20,000円
- 専業主婦(夫):月23,000円
特に注意すべきは、企業型DCを導入している会社員である。
企業型DCの掛金とiDeCoの掛金は合算で上限管理されるため、事前確認が必須である。
iDeCoのメリット
① 掛金が全額所得控除になる
拠出した金額はそのまま所得控除となり、所得税・住民税が軽減される。これはNISAにはない最大の強みである。
② 運用益が非課税
通常約20%課税される運用益が非課税となる。
③ 受取時にも税制優遇がある
年金形式なら公的年金等控除、一時金なら退職所得控除が適用される。
iDeCoのデメリット
① 60歳まで引き出せない
最大の欠点であり、流動性は極めて低い。
② 手数料がかかる
口座管理手数料が発生し、残高が少ないと負担が重く感じられる。
③ 運用リスクがある
元本保証ではなく、商品選択を誤ると元本割れの可能性がある。
NISAとの比較
iDeCoとNISAは目的が異なる制度である。
| 項目 | iDeCo | NISA |
|---|---|---|
| 目的 | 老後資金 | 資産形成全般 |
| 引き出し | 60歳まで不可 | いつでも可能 |
| 税制優遇 | 掛金・運用益・受取時 | 運用益のみ |
| 自由度 | 低い | 高い |
節税効果はiDeCoが圧倒的だが、自由度ではNISAが優れる。
企業型DCを利用している会社員の注意点
企業型DCを導入している会社員は、制度を正しく理解しないと損をする可能性がある。
- 企業型DCの拠出額によってiDeCoの上限が制限される
- 企業型DCの運用商品が優秀なら、無理にiDeCoを併用する必要はない
- 逆に、商品やコストに不満がある場合はiDeCo併用が有効になる
まとめ
iDeCoは非常に強力な節税制度であるが、使いどころを間違えると不自由さが目立つ制度でもある。
特に会社員は、企業型DC・NISA・iDeCoの役割を整理した上で使い分けることが重要である。
老後資金という「動かせないお金」をiDeCoで作り、自由度の高い資産形成はNISAで行う。この役割分担こそが、現実的かつ合理的な戦略と言えるだろう。

